人の心に刺さる言葉を生み出すには、どうしたらいいのか。
そう考えた人は少なくないと思う。
ここで言う言葉というのは、文章だけじゃない。
日常で使う話し言葉も含んでいる。
誰かが落ち込んでいるとき、その人が元気になるような声をかけるにはどうしたらいいのか。
誰かに相談されたとき、役に立つアドバイスをするためにはどうしたらいいのか。
よく聞くのは、正しいことだけを伝えるのではなく、感動や共感、驚きを含ませる、というもの。
なるほど。
でも、それって難しい。
センスが必要なんじゃないか?…僕はそう思うこともある。
とはいえ……
僕の中にも、妙に印象に残っている言葉はあるのだ。
しかも、当人はおそらく僕に刺さる言葉を言ってやろうと思っていない。
だから多分なんだけれど、人の心に刺さる言葉を生み出すには、クリアしなければいけない条件があるんだと思う。
少し前に、仕事の方たちとこんなやり取りをした。
僕「そう言えば、以前デザイナーさんがデザインしたホワイトペーパー、納品したんですけどどうなりましたかね?修正点がなければ、デザイナーさんに報酬のお支払いをしたいなと思っております」
Aさん「たしかに。Bさん、どうなっているかクライアントに確認取れますか?」
Bさん「わかりました。確認してみます」
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Bさん「クライアントから連絡来ました。現在確認中とのことなので、もう少々お待ちください。なかなか連絡ができず、申し訳ありません」
僕「ご確認いただき、ありがとうございます!承知しました」
Aさん「いえいえ。ボールは向こうにあるので、お気になさらずです」
仕事をしていると、誰かと当然連絡をやり取りをする。
で、忙しいと、たまに前の話題が忘れ去られていくこともある。
このときは、誰かがアクションを起こすべきなのに起こしていない。
こういうアクションを起こすべき側をボールを持っている側と言う。
僕は、この「ボールは向こうにある」という言葉が妙に印象に残っている。
なぜか。
この言葉には、別の意味が含まれていると思ったからだ。
僕はライターもやっているから、記事の作成で取引先さんとやり取りをする。
記事の作成にもいろいろあって一概には言えないけれど、だいたいは次のように流れていく。
①クライアントが記事作成の依頼をする
②ライターが記事を書く
③ライターが納品したものをクライアントがチェックする
④WEB記事ならメディアに公開
これまでは、上の流れを当たり前のようにやっていたけれど、ふと改めて思ったとき、先程のボールと強烈に結びついた。
もし、記事作成の依頼があったのに、メディア公開まで至っていないのなら、ボールがどちらかの側にいつまで経ってもあることになる。
仮に僕がいつまでもボールを持っていたら、僕はライターとして食べていけなくなるだろう。
期日までに納品してくれないライターなんて、クライアント側からしてみれば扱いにくいからだ。
「ボールは向こうにある」は、話題が途中で持ち上がらなかったときに、どちらがアクションを起こすべきなのかを示すだけではない。
そもそもボールが向こうにある状態を常に作り続けていくことが、仕事をするスタンスとして重要なことを教えてくれている。
多分だけれど、印象に残る言葉は、こうして生み出されるのではないだろうか。
人の心に刺さる言葉は、言葉の内容だけでは成立しないのだ。
そもそも相手に納得してもらう必要がある。
もし心に刺さる言葉を発したいと考えているなら、
「その人なりに解釈しやすい言葉を、その人の環境やタイミングに合わせて提示」
しなければならない。
だから難しい。
けれど、それができれば、人の信頼や評価を多く獲得し、場合によっては報酬も得られる。
挑戦しても損はないのは確かだ。