前々から気になっていたダーツバーに行った。
ダーツは決して上手じゃない。
でも好きなスポーツだ。
ここ2年くらい、いろいろ理由が重なってできていなかった。
もうそろそろいいだろうと思って、店に行ってみた。
そのダーツバーは地下にあった。
通りから見えるのは、店の入口に続く下りの階段と、営業時間が書いてある看板だけ。
中の様子がわからず、若干入りにくさはあったが、呑み屋帰りに思い切って飛び込んでみた。
いざ飛び込んでみると、若いカップルが一組、それと常連らしき人がひとりいて、それぞれがそれぞれの楽しみ方でダーツをしていた。
こういうところは常連さんが、がっつりプレイしていると思っていたから意外だった。
僕たちが入ると、マスターがすぐに「初めてですか?」と気さくに聞いてきてくれて、「はい、そうです」と言うと、丁寧にドリンクの注文の仕方や、ダーツの料金システムを教えてくれた。
初めての店は、ドキドキするものだ。
場違いなんじゃないか。
僕なんかが来ていいんだろうか。
そう思ってしまう。
考えすぎなのかもしれないけれど。
だけれど、こうやってすぐに話しかけてきてくれて、丁寧に接してくれると本当に安心する。
それだけで、ここに来てよかったなと思える。
店側からしたら、当たり前なのかもしれないけれど。
—
昔、友だちと3人で、夜通しでクリケット(ダーツのゲームのひとつ)をやり続けたことがある。
それも一回、二回の話じゃない。
3人集まると、わりとそれが頻繁にあった。
みんな、あのときも大人だったのにね。
なんか、青春を取り戻したかったのかもしれない。
6時間、7時間。
僕たちはずっと繰り返し、クリケットで1対1対1の対戦をした。
ゲームは同じなのに、毎回盛り上がった。
ひとりがやっとの思いでオープンした場所を、もうひとりがあっさりトリプルに入れてクローズする。
「なんてことしてくれたんだ!」って突っ込んだやつが、今度は7マークでめちゃくちゃリードする。
みんなで、ぎゃあぎゃあ言いながらプレイして、そうして気づいたら、朝になっていた。
仲の良い友だちと同じゲームを長時間する、というのは、結構いろんな条件が揃っていないとできなかったりするものだ。
誰かが下手すぎると、気遣いみたいなのが心の底で芽生えて、結構早い段階で「もうそろそろいいか」みたいになる。
誰かがうますぎても、最初のうちは「すげえ、すげえ」となるけれど、競う楽しさがないのですぐに飽きる。
全員のスキルが同じでも、下手すぎるとそれはそれで盛り上がらない。
全員のスキルが高いという条件は、そもそもクリアするのは難しい。
お互いが絶妙に下手で、微妙に上手。
あと、遊び続ける体力と余裕を持っているのも重要です。
そういう条件が揃っていないと、同じゲームを何時間も続けられない。
そう考えると、あのとき遊んだ時間がとても愛おしくなってくる。
今はお互いにお互いの道を歩んでいるから、そういう時間を過ごすことが難しくなっているから、余計にね。
—
そんなことを考えながらダーツをやっていたら、あっという間に閉店時間の24時になった。
ダーツバーに入ったのは、たしか22時だった。
まだ2時間しか経っていない。
まだまだ物足りなかった。
僕はダーツが好きだ。
多分、これからどんなスポーツやゲームをやっても、この地位は不動だろう。
あのときのような、技量の絶妙なバランスが取れる友だちが、また現れない限り。
それをあらためて教えてくれた、ダーツバーに感謝。
思い出に浸りに、また来ます。